ステップ 5: トラブルシューティング
トラブルシューティング¶
プロジェクトのセットアップは、正しいデバッグツールを用意することでもあります。
依存ライブラリの追加¶
前章で作成したプロジェクトでは、ライブラリの依存はほとんどありませんでした。テンプレートエンジンもデバッグツールもロガーもありませんでした。それは、必要になったときにライブラリを追加すれば良いという考えからです。なぜなら、HTTP API や CLI ツールを開発するのにテンプレートエンジンはいらないですからね。
では、どうやって依存ライブラリを追加しましょうか。Composer でですね。ただし、 "ただの" Composer パッケージのインストールのみでなく、以下の "特別" な2つのパッケージをインストールしましょう:
- Symfony Components: ほとんどのアプリケーションが必要とするコアな機能と低レベルの抽象レイヤーを実装しているパッケージです(routing, console, HTTP client, mailer, cache, など)
- Symfomy Bundles: 高レベルの機能を追加したり、サードパーティのライブラリを統合する機能を提供するパッケージです(ほとんどの場合、バンドルはコミュニティによって作成されています)
でははじめに、問題の原因を調べるのに役に立つ Symfony Profiler を追加しましょう:
1 | $ symfony composer req profiler --dev
|
profiler
は symfony/profiler-pack
パッケージのエイリアスです。
エイリアス は、 Composer の機能ではなく、 Symfony が提供する便利な機能の一つです。エイリアスは、ポピュラーな Composer パッケージのショートカットです。アプリケーションの ORM が必要であれば、 orm
を require してください。 API の開発がしたければ、 api
を require してください。これらのエイリアスは、Composer package に自動的に解決されます。このエイリアスは Symfony のコアチームによって選ばれています。
もう一つ便利な機能として、symfony/cache
と書かずに symfony
を省略して cache
を require することができます。
ちなみに
前章で symfony/flex
という Composer プラグインに関して言及したのを覚えていますか?このプラグインがエイリアス機能を提供しています。
Symfony の環境について¶
composer req
コマンドに --dev
フラグが指定されてていたのに気づきましたか? Symfony Profiler は、開発時のみに必要な機能なので、本番ではインストールしないようにしたいですからね。
Symfony は、 環境 の概念があります。デフォルトでは、 dev
, prod
, test
の3つの環境がありますが、必要であれば追加することができます。すべての環境において、同じコードが使われますが、異なる 設定 をすることが可能です。
例えば、dev
環境では、すべてのデバッグツールを有効にしています。しかし、prod
環境では、アプリケーションのパフォーマンスを最適にしています。
APP_ENV
の環境変数を変更することで、環境をスイッチすることができます。
SymfonyCloud へデプロイする際は APP_ENV
に既にセットされている環境は、自動的に prod
となります。
環境設定の扱いに関して¶
APP_ENV
はあなたのターミナルにセットしてある "実際の" 環境変数です。
1 | $ export APP_ENV=dev
|
本番のサーバーで、環境変数を使用して APP_ENV
のような値をセットするのは良いことです。しかし、開発時のマシンでは、環境変数をたくさん定義するとややこしくなりますので、代わりに .env
ファイルに定義します。
注意が必要な .env
ファイルはプロジェクトを作成したときに自動的に生成されます:
1 2 3 4 5 6 | ###> symfony/framework-bundle ###
APP_ENV=dev
APP_SECRET=c2927f273163f7225a358e3a1bbbed8a
#TRUSTED_PROXIES=127.0.0.1,127.0.0.2
#TRUSTED_HOSTS='^localhost|example\.com$'
###< symfony/framework-bundle ###
|
ちなみに
Symfony Flex のレシピによって、.env
を使用すれば、どんなパッケージも環境変数をセットすることが可能です。
.env
ファイルはリポジトリにコミットされ、本番の デフォルト の値として使われます。 .env.local
ファイルを作成すれば値を上書きすることができますが、リポジトリにコミットするべきファイルではないので、 .gitignore
に既に書いてあります。
シークレットな値や注意が必要な値をこれらのファイルに書かないでください。他のステップでシークレットな値を扱う方法を学びますので、待っていてください。
すべてをログに吐こう¶
新しいプロジェクトでは、ロギングやデバッギングは有効になっていません。開発時のデバッグのための問題の調査のためにツールを追加しましょう。また、いくつかは本番でも使用します:
1 | $ symfony composer req logger
|
まず、開発環境のみに使用するデバッグツールをインストールしましょう:
1 | $ symfony composer req debug --dev
|
Symfony Debugging Tools について¶
ホームページを更新すると、スクリーンの一番下にツールバーが表示されていると思います:

最初に気づくこととして 404 が赤字で表示されていますね。このページはまだホームページとして定義していないので最初の表示として使われています。エラーページですが、デフォルトでも、ちゃんと表示されるなんて素敵でしょう。正しい HTTP ステータスコードは 200 ではなく 404 となっています。このようにデバッグツールバーがあるので、正しい情報を見ることができます。
小さな感嘆符(!)をクリックすると、Symfony profiler 内のログから "実際の" 例外のメッセージを見ることができます。スタックトレースを見たいときは、左のメニューの "Exception" リンクをクリックしてください。
コードに問題があるときは、以下のような問題が起きている箇所を調べることができる例外ページが表示されます:

いくつかクリックして、Symfony profiler でどんな情報にアクセスができるか試してくてください。
デバッグ時にはログはとても役に立ちます。Symfony には、すべてのログ(Webサーバのログ、PHPのログ、アプリケーションのログ)を tail できる便利なコマンドがあります。
1 | $ symfony server:log
|
では、小さな実験をしてみましょう。 public/index.php
を開いて、 PHP のコードを壊してみてください(たとえばfoobar という文字をコードの途中に追加してみましょう)。ブラウザでページを更新して何がログに流れてくるか見てみましょう:
1 2 | Dec 21 10:04:59 |DEBUG| PHP PHP Parse error: syntax error, unexpected 'use' (T_USE) in public/index.php on line 5 path="/usr/bin/php7.42" php="7.42.0"
Dec 21 10:04:59 |ERROR| SERVER GET (500) / ip="127.0.0.1"
|
エラーに気づきやすいように色付けされて出力されます。
Symfony の dump()
関数も便利なデバッグヘルパーです。見やすくインタラクティブなフォーマットで複雑な変数をダンプして見ることができます。
今度は、 public/index.php
を修正して Request オブジェクトをダンプしてみましょう:
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 | --- a/public/index.php
+++ b/public/index.php
@@ -18,5 +18,8 @@ if ($_SERVER['APP_DEBUG']) {
$kernel = new Kernel($_SERVER['APP_ENV'], (bool) $_SERVER['APP_DEBUG']);
$request = Request::createFromGlobals();
$response = $kernel->handle($request);
+
+dump($request);
+
$response->send();
$kernel->terminate($request, $response);
|
ページを更新すると、 "target" アイコンがツールバーに表示されていますね。この "target" アイコンをクリックするとよりシンプルな詳細ページへ遷移します:

このステップで行った変更を戻しましょう:
1 | $ git checkout public/index.php
|
IDE の設定¶
開発環境では、例外が投げられると Symfony は、例外メッセージとスタックトレースのページを表示します。ファイルパスから、自分の使っている IDE で問題の箇所を開くことができます。この機能を使うには、 IDE を設定する必要があります。Symfony は最初からたくさんの IDE をサポートしています; 私は VSCode を今回のプロジェクトで使用しています:
1 2 3 4 5 6 7 | --- a/php.ini
+++ b/php.ini
@@ -6,3 +6,4 @@ max_execution_time=30
session.use_strict_mode=On
realpath_cache_ttl=3600
zend.detect_unicode=Off
+xdebug.file_link_format=vscode://file/%f:%l
|
ファイルへのリンクは例外だけではありません。例えば、IDE に設定すれば、デバッグの際のコントローラも開くことができます。
本番のデバッグ¶
本番サーバのデバッグは、より複雑です。例えば、 Symfony profiler は使えませんし、ログの情報も冗長にしていません。それでも、ログの tail は可能です:
1 | $ symfony logs
|
また、Webコンテナ上に SSH で接続することも可能です:
1 | $ symfony ssh
|
簡単に壊すことはできないので心配しないでください。ほとんどのファイルシステムは書き込み権限はありません。本番でのホットフィックスはできないようになっています。より良い方法はこの書籍の後の方で説明します。
- « Previous ステップ 4: メソドロジーを適用する
- Next » ステップ 6: コントローラーを作成する
This work, including the code samples, is licensed under a Creative Commons BY-NC-SA 4.0 license.